【合格体験記】独学で司法試験・予備試験に挑む ~普段の勉強方針~

1 私のバックグラウンド

今回は、合格体験記を書こうと思います。

私は、大学3年生の頃から、本格的にロー入試・司法試験の勉強を始めました。ロースクールには既修で入学し、ロー3年生の時に予備試験に合格の上、1回目の受験で司法試験(平成26年度)に合格することができました。

金銭的な理由から予備校の講座を利用できなかったため、基本的に独学です。予備校は、ロー入試、予備試験や司法試験の際に、答練や模試をピンポイントで利用する程度でした。

私は予備校に批判的ではありません。むしろ、予備校の講座は非常に分かり易いので、初学者で金銭的にも余裕がある方は、利用するのがよいと思っています。予備校も基本書も、要は使い方次第だと思います。

2 基本方針=「条文確認+過去問演習+必要な知識の一元化」の徹底的な反復

⑴ 受験勉強にあたっての基本方針
私は、司法試験の受験勉強をするにあたり、以下の①~③を基本方針とし、これらをひたすら反復するようにしていました。

①文献を読んでいる途中で参照条文が出てきたときは必ず参照すること、また、スキマ時間に条文素読をすること(詳細は2⑵)

②過去問演習を勉強の中心に据え(つまり過去問を何回も何回も繰り返し解くということです)、基本書等は過去問演習の補助的な教材として用いること(詳細は2⑶)

③必要な知識の一元化(まとめノートの作成)を都度行い、繰り返し読み込むこと(詳細は2⑷)

この3つをただひたすらに繰り返していました。これは派手さもなく、本当に地味で地道な作業です。しかし、これ以外に王道はないと思っていますただただ過去問を回し、条文番号が出てきたら必ず読む、知識を一元化してまとめノートを作り、まとめノートを繰り返し読む、スキマ時間に条文素読をする。まさに修行僧が如く、淡々と繰り返していました。

⑵ 条文確認の必要性(①)
私は、文献を読んでいる途中で参照条文が出てきたときは必ず参照し、スキマ時間にも条文素読をしていました。誰よりも六法の条文を読んでいた自信があります。

六法を参照していくうちに、六法の小口が黒っぽく変色し(電車の中でも読んでいたので、かなり怪しい人に思われていたかもしれません笑)、最終的には六法の背が割けてしまいました。それくらい六法を読んでいたと思います。

長くなりますが、なぜ条文確認が必要なのかについて詳しく説明します。

当たり前ですが、人間は、権利や義務の存在の有無を、直接目で見て確認することはできません。権利や義務の存否は直接認識できないからこそ、法律は、法律要件(構成要件)という事実((事実の存否については、証拠などから検討が可能です。))に法律効果(権利義務や国家刑罰権)の発生・変更・消滅をかからしめているのです。

弁護士の基本的な仕事は、私たちが生活にするにあたって生じる雑多な社会的事実の中から、法的に意味のある事実を抽出(当事者から聴取する等)し、証拠を収集したうえで、当事者の言い分を法的に意味のある主張に翻訳し、裁判官を説得することです。

裁判官の基本的な仕事は、当事者の主張する事実が認められるかを中立・公正に判断し判決をすることにありますが、裁判官は、自ら体験していない過去の事実の存否を判断することになるので((事件の事実を自ら体験する等した裁判官は除斥や忌避の対象となり、裁判から排除されるのが法律の建前となっています。理由の1つは、事件の事実を自ら体験する等した裁判官を裁判から排除することで、証拠に基づく事実認定を強制し、かつ、上訴審においても、上訴審の裁判官が、原審の裁判官の事実認定の過程を事後的に検証する仕組みを確保するという点にあります。))、その事実が本当に存在したのかどうかを証拠に基づき認定した上、判決を出します。

検察官の基本的な仕事は、警察を指揮して捜査を行い、公判廷で公訴事実の存否と刑の量定に必要な事実にかかる証拠を提出し、立証することです。

このように、法曹三者の仕事は、雑多に存在する社会的事実から法的に意味のある事実を抽出し、権利義務の存否を裁判という手続を通して明らかにすることを通じて紛争を解決し、社会の秩序を守ることにあります。

法律家の思考は、常に条文をベースに、問題となっている訴訟物や国家刑罰権は何か、それを基礎付ける主要事実(構成要件)は何か、事実を基礎付ける間接事実・証拠にはどのようなものがあるのか、これらはどのような手続を経てなされるのか、といった経過を辿ります。私自身、司法修習中の今、この思考過程の重要性を再認識しているところです。

日本は成文法の国なので、法律要件と法律効果が条文に記載され、手続も明記されています。法律家の主張や判断に至るまでの手続は、全て条文を基礎としており、法的根拠のない主張・判断は法的説得力を欠くことは明らかです。法律家の活動の根拠を遡れば、その全てに根拠条文があるいっても過言ではありません。

かなりくどい説明になってしまいました。当たり前ですが、司法試験は法律家になる者を選別する試験なので、条文が合否の生命線です。このことは、論文式試験で条文番号の指摘、法律要件の摘示及びあてはめの重要性が出題趣旨・採点実感で繰り返し明示され、短答式試験では基本的な条文が繰り返し問われていることからも明らかです。

⑶ 過去問演習の必要性(②)
私は、論文については、新司の過去問(全年度)、予備試験の過去問(全年度)、上三法及び両訴の旧司の過去問(平成以降に限る)を解き、短答については、新司の過去問(全年度)、予備試験の過去問(単独問題に限る)を解いていました。

当然ですが、過去の合格者は、全員、当該受験年度の問題を解き、司法試験に合格しています。

この記事を読んでいただいている方も、試験本番に臨み、出された問題を解き、合格する必要があります。司法試験受験生の目標は、司法試験の問題を解いて合格することです。

そのための最高の教材が過去問です。

このように考えると、基本書は、過去問を解く際に用いる条文の趣旨や判例・実務を理解するための補助的教材という位置付けになります。市販の演習書も、司法試験委員会が時間をかけて練った問題に比べれば、重要度がワンランク下がることは明らかなので、時間的余裕がある科目に限り、受験生の利用率が高いものを科目毎に1冊利用すれば足ります。

私は、大学3年生から勉強を開始しました。最初は、伊藤塾の試験対策講座(シケタイ)を各科目ひと通り読んでざっくりとですが体系的な理解をし、その後は、早々にロー入試・既修者試験の過去問や司法試験の過去問を解き始めました。当初は過去問を解いても全く歯が立ちませんでしたが、歯を食いしばって、何度も何度も繰り返し解いていました。

⑷ 情報一元化の必要性(③)
過去問を解くと、必ずミスをした部分が出てくるので、都度該当する条文を確認し、理解が曖昧だった部分は基本書や判例集で確認し、過去問を解くにあたって必要な情報を一元化していました。

過去問を解くにあたって必要な情報とは、論文式試験では、定義、条文の趣旨、規範(考慮要素を含む)、判例のキーワード、自分がやりがちなミスについてのメモ等、答案を書くにあたって使う知識のみを指します。

これらを超える詳細な情報は、基本書等にまとまっているので、基本書を参照すれば足ります。これ以上の情報を自分で一元化することは単なる自己満足であり無意味です。

私は、論文の情報は辰巳の「趣旨規範ハンドブック」に一元化し、短答の情報は有斐閣の「判例六法」に一元化していました。

具体的には、短答式試験では、判例六法に、全ての問題について、選択肢ごとに、問われた条文・判例部分のすぐ近くの余白に、「出題年度・問題番号・肢番」をメモし、蛍光ペンでマークして一元化します。

例えば、条文や判例の側に(H23・Q10・ア)と書き込んでいきました。

そうすることで、基本書や過去問の解説に条文番号がありこれを参照したときや、条文素読をしている際に、「これは平成23年第10問の選択肢アで問われた条文・判例だ」ということが後からでも分かります。

この様に、短答について、新司法試験と予備試験単独問題の出題年度・問題番号・肢番を全て判例六法にメモをすると、何度も問われている条文・判例が分かるため、条文を参照する際や条文素読の際に非常に参考になります。

3 使用教材(直前期にも使用したもの)

[全科目共通]
・判例六法(有斐閣)、試験用法文(ぎょうせい)
・過去問 ※短答過去問の解説はLECのシリーズを使用
・出題趣旨、採点実感
・「趣旨・規範ハンドブック」(辰巳法律研究所)
・別冊ジュリスト「最高裁 時の判例」(有斐閣)
・中央大学真法会編「司法試験 上位合格答案再現集〈平成18〜22年度〉」(法学書院)
・「司法試験 論文合格答案再現集」(辰巳法律研究所)※平成23年度以降のもの
・菅野邑斗「司法試験合格答案の基本−落ちない答案の書き方−」(法学書院)

[民法]
・潮見他 編「民法判例百選Ⅰ・Ⅱ」(有斐閣)
・潮見佳男「入門民法(全)」(有斐閣)
・貞友義典「貞友民法 LIVE過去問解説講義−決定版−」(辰巳法律研究所)
・柴田孝之「司法試験論文過去問講座〈2〉民法」(法学書院)
・池田清治「基本事例で考える民法演習」(日本論評社)

[会社法等の商事系科目]
・江頭他 編「会社法判例百選」(有斐閣)
・垣内 編「会社訴訟の基礎」(商事法務)
・伊藤他「リーガルクエスト会社法」(有斐閣)
・江頭憲治郎「株式会社法」(有斐閣)
・弥永真生「リーガルマインド商行為法・商法総則」(有斐閣)
・早川徹「基本講義 手形・小切手法」(新世社)
・伊藤他「事例で考える会社法」(有斐閣)

[民事訴訟法]
・高橋他 編「民事訴訟法判例百選」(有斐閣)
・三木他「リーガルクエスト民事訴訟法」(有斐閣)
・田中豊「民事訴訟の基本原理と要件事実」(民事法研究会)
・柴田孝之「司法試験論文過去問講座〈4〉民事訴訟法・刑事訴訟法」(法学書院)

[刑法]
・前田雅英「最新重要判例250 刑法」(弘文堂)
・山口厚「刑法」(有斐閣)
・柴田孝之「司法試験論文過去問講座〈1〉憲法・刑法」(法学書院)
・井田他「刑法事例演習教材」(有斐閣)

[刑事訴訟法]
・井上他 編「刑事訴訟法判例百選」(有斐閣)
・リーガルクエスト刑事訴訟法
・柴田孝之「司法試験論文過去問講座〈4〉民事訴訟法・刑事訴訟法」(法学書院)
・古江頼隆「事例演習刑事訴訟法」(有斐閣)

[憲法]
・青柳幸一「わかりやすい憲法(人権)」(全国警備業協会)
・長谷部他 編「憲法判例百選Ⅰ・Ⅱ」(有斐閣)
・小山剛「「憲法上の権利」の作法」(尚学社)
・芦部信喜「憲法」(岩波書店)
・大島義則「憲法ガール」(法律文化社)

[行政法]
・中原他 編「ケースブック行政法」(弘文堂)
・橋本博之「行政判例ノート」(弘文堂)
・中原茂樹「基本行政法」(日本論評社)
・橋本博之「行政法解釈の基礎−「仕組み」から解く」(日本論評社)
・曽和他 編「事例研究 行政法」(日本論評社)

3 Replies to “【合格体験記】独学で司法試験・予備試験に挑む ~普段の勉強方針~”

  1. 初めまして、

    過去問ですが、民法改正前の論文の過去問は今も使えると思いますか?
    今からならどうやって民法の過去問の勉強しますか。
    基本書などは改正後を買えばいいと思いますが。

    1. レンさん

      コメントありがとうございます。

      (1つ目の質問)
      これは①使えるものと②使えないもの(使うのが難しいもの)があると考えます。
      改正民法には、これまでの判例を明文化したものと、新しい規範を創設したものがあるからです。

      前者がベースになっている過去問は使うことができるでしょう(①)。判例が条文になった点以外は、出題当時と基本的に異ならないからです。
      後者は、当時の試験委員の出題趣旨が妥当しないおそれがあるので、基本的には使えない(使うのは難しい)と考えます(②)。

      ただ、いずれにしても、①②を峻別するために、一度過去問には目を通す必要があります(フル答案を書く、答案構成のみ、先に出題趣旨を見る、などは様々だと思いますが)。

      (2つ目の質問)
      私が受験生であれば、自主ゼミで民法の過去問を解きます。過去問が使えるといっても、出題当時から法律が変わっているので、1人で解いていると外れた理解をするおそれがありますが、複数の目で検討すれば、理解が外れるリスクを抑えられるからです。

      上記の①②の峻別を自主ゼミで行うことも有用だと思います。信頼できるゼミ仲間や、質問ができる教授などがいるのであれば、峻別後、②のパターンの過去問についても、検討にチャレンジしてみるといいと思います。

      ・・・あくまでも一個人の考えで、かつ、受験時代から一定期間離れた者の回答です。
      色々な人の考えを聞いて、試行錯誤しながら自分のものにしていくのがいいと思います。

      よろしくお願い致します。

      1. 回答ありがとうございます。

        独りよがりにならずに頑張ってみようと思います。
        また、伊藤眞の予備論文に過去問が載っているようですが、こう言う書籍が改正された時に解説が変わる可能性もあるかな、と思っています。

        ありがとうございました。

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