【連載】教養としての法律学 ~民法~

第1 民法とは

1 民法は法律の王様

  前回の法律一般その2の「2 法律学とは」で、法律学は、世の中のあらゆる社会関係を、権利と義務という言葉で説明・分析しようとする壮大が学問ですといったお話をしました。

  今回は、民法について書いていきます。民法は、法律の王様です。その理由は、民法が、以下のとおり、人が生まれてから亡くなるまでの間のすべてに関係する法律だからです。


2 具体例

  例えば、日常生活では、スーパーでの買い物(売買契約)、アパートへの入居(賃貸借契約)、マイカーローンを組む(消費貸借契約)、就職する(雇用契約)、弁護士へ依頼する(委任契約)、銀行で貯金をする(寄託契約)などなど様々な行為をしていますが、これに限らず、民法は、日常生活のほぼ全てに関係するルールです。

  また、人は生まれた瞬間から権利を手に入れたり・義務を負ったりすることが可能になりますが、未成年者の間は親権者などの監督の下で生活し(未成年者取消権)、大人になれば1人で契約できるようになります。

  また、いずれ歳を重ねて認知症となり充分な判断能力がなくなってしまったため、1人で契約することが難しい場合も出てきます(成年後見)。人生には多くの出会いと別れがあり、人は結婚して子供ができたり、離婚したりもします。そして最後に、人は亡くなります(相続)。

3 小括

  このように、民法は人が生まれてから亡くなるまでのほぼ全てをカバーするため、民法についてお話をするには膨大な記述が必要になります(実際の民法の教科書は、分厚く、かつ、何冊にも分かれていることが多いです。)。

  以下では、本連載の趣旨に照らして、民法の根底にある価値判断・考え方を中心にお話をします。

  民法は法律の王様です。民法の根底にある価値判断・考え方が他の法律の大原則となっており、他の法律は、特殊な社会関係に限定して、民法の大原則に修正を加えることになっています((例えば、消費者契約法は、消費者と事業者との間の関係について、消費者と事業者の情報量・質や交渉力の格差に注目し、消費者を保護する制度を定めたルールです。))。
繰り返しになりますが、民法の最大の特徴は、数ある法律の大原則を定めたルールであるということです。少し詳しくお話すると、以下のとおりになります。

 

第2 法律の分類から見た民法の特徴

1 公法と私法

  日本に法律は数多く存在しますが、数ある法律の分類の方法の1つとして、「私法」と「公法」があります。

  「公法」とは、国や都道府県同士の関係、国や都道府県と国民(一般人)の関係についてのルールです。例えば、憲法や地方自治法といったものがこれに当たります。さしあたり、公共に関する法律群だとイメージいただければ大丈夫です

  これに対し、「私法」とは、一般人と一般人の関係についてのルールです。一般人には、生身の人間はもちろん、会社などの法人も含まれます。さしあたり、私生活や仕事に関する法律群だとイメージいただければ大丈夫です。

  民法は人が生まれてから亡くなるまでの全てをカバーしていますので、「私法」にあたります。そして、上記のとおり、民法は、私法の大原則にあたります。

 

2 実体法と手続法

  法律の分類の方法として、他にも、「実体法」と「手続法」という分け方があります。

  「実体法」とは、法律要件と法律効果が書いてあるルールであり、いわば権利義務のカタログです。民法は、実体法の代表例です。

  これに対し、「手続法」とは、権利義務の有無の判断をするための流れに関するルールです。例えば、民事裁判の流れについてのルールである民事訴訟法がこれに当たります。

 

3 一般法と特別法

  他にも、法律の分類方法として、「一般法」と「特別法」という分け方があります。
「一般法」とは、数ある法律の中で、大原則を定めたものをいいます。民法は私法の一般法です。

  これに対し、「特別法」とは、一般法の大原則を特定の社会関係について修正するものをいいます。

  例えば、民法は、一般人にも会社にも適用されるルールであり、本来、事業者(会社)と消費者(一般人)との間の契約もカバーする法律です。もっとも、消費者と事業者の間には、情報量・質や交渉力に格差があり、消費者が不当な契約をしていることが少なくないため、消費者契約法が制定されており、消費者を保護するべく、事業者と消費者の間の契約に限定して、民法の大原則を修正するルールを定めています。つまり、消費者契約法は、民法の特別法にあたります。

 

4 小括

  このように、民法は、私法の実体法であり、かつ、一般法であり、法律の大原則です。民法がカバーする範囲も、人が生まれてから亡くなるまでのその全てにわたります。
だからこそ、民法は法律の王様だと言っても過言ではないのです。

 

第3 民法の登場する言葉

1 権利義務

  民法は実体法であり、権利義務が発生・変動・消滅する原因となる事実(法律要件)と、権利義務がどのように発生・変動・消滅するのかという内容(法律効果)について書かれた、いわば権利義務のカタログです。
そのため、民法には、権利・義務がたくさん書かれています。例えば、売買契約をすれば、売主は買主に対して代金支払請求権を取得し、買主は売主に対して買った物の引渡請求権(買った物をこちらに渡すように請求する権利)を取得します。

 

2 人 = 権利義務の主体

  人には、「一般人(生身の人間)」((法律の言葉でいうと、「自然人」といいます。))と「法人」(会社など)があります。

  人はもちろん、法人も、法人そのものが権利を取得したり、義務を負ったりすることができます(権利義務の主体)。

  そして、権利義務の主体になることができるということは、経済活動を含めた社会活動に参加することができるということを意味します。すなわち、自分の考えてに基づいて、自由に契約をすることができます。人は、色々な活動をして、仲間や家族を作ったり、生活の糧を得て生活していますので、権利義務の主体になれるということが必須になります(RPGゲームみたいなイメージですね。)。

 

3 物 = 権利義務の客体

  物は、権利義務の客体、つまり、権利義務の対象になります。
例えば、物を買った場合、買主は、買った物の引渡請求権を取得しますので、売主に対し、その物をこちらに渡すように請求できます。

  このように、物は、取引の対象になります。そして、当然ですが、物が権利義務の主体になることはありません((発展的な話ですが、昨今、人工知能(AI)の発展が目覚ましいです。厳密にいえば、法律上、AIも「物」であり、権利義務の主体となることはありませんが、今後さらに技術が発展し、人間に近い(自分で意思決定をする)人型ロボットなどが出てくると、法律も変わらざるを得ないかもしれません。))。

 

4 小括

  以上のとおり、民法は、人が生まれてから亡くなるまでの全てをカバーする大原則の法律であり、その範囲も非常に広範囲なのですが、民法の世界は、「権利義務」「人」「物」という概念で整理することができます。

 

第4 権利義務の発生根拠

では、そもそも、なぜ権利義務が発生するのでしょうか?権利義務の発生根拠は複数ありますが、以下では、代表例である「契約」と「不法行為」についてみていきます。

 

1 契約

⑴ なぜ権利義務が発生するのか?(私的自治と自己責任)

  先ほどお話ししたとおり、人(生身の人間や、法人)は権利義務の主体です。そして、人は、RPGの主人公が如く、権利義務の主体として、あらゆる社会活動をし、生活の糧を得、生きています。

  その際、「誰と」「どこで」「どのような」住まいで暮らすかはその人の自由ですし、「どこでどのような仕事をするか」「何を買うか」「何をするか」もその人の自由です。

  ただし、人は1人では生きていけませんので、他人と話し合って、取引をすることで社会が成り立っています((現代社会は分業化して発展していますので、たった1人で稲作や漁をして食料を確保したり、一から家・家財道具を作って生活することは到底不可能です。))。その他人との話合い、取引の際に、互いが納得すれば「合意(約束)=契約」に至ります。

  しかし、法律がなければ、気分次第で、その「契約」を破棄することも自由となります。

 

・・・それでは社会生活が成立しません。

 

  新生活のためにアパートを借り、家財道具を購入していたのに、大家さんから「やっぱり無しにしてください」なんて笑いながら言われたら、「えっ」となるは当然です。また、「引っ越しができなくなったので、買った電化製品は返しますから、お金を返してください」なんてことがまかり通ってしまうと、家電屋さんも「えっ」となってしまいます。
このように、社会は、いくつもの契約が重なり合い、別の契約も守ってもらえるとの予測・前提のもとで契約が結ばれていることが殆どです。そのため、何の理由もなしに契約を破棄されてしまうと、社会生活は予測可能性を失い、大きく混乱し、全員の不利益になってしまいます。

  そこで、「契約したものは守りましょう」という価値判断が法律になったのです((ここでの「契約を守りましょう」とは、『何も理由がないのに』契約を破棄することはできない、という意味です。例えば、契約書を作成する場合は、契約の解除についても記載することが通常ですが、これは、契約内容に従って(すなわち、一定の場合に契約が解除され得ることがあることをお互い分かった上で)解除しているわけですから、予測可能性が奪われるわけではありません。))。すなわち、一度「契約」をすれば権利義務が発生し、これを守らない場合は、最終的に、国家権力が、強制的に契約が守られている状態を実現することができるようにしたのです((強制力の点については、「法律一般その1」でお話したとおりです。))。

  つまり、「契約をするかしないか、あるいはどのような契約をするか、はあなたの自由ですが、一度契約をしたらそれに拘束される」ということです。

  これは、自由と責任の抱き合わせです。すなわち、何をするのも自由だけれど、自由には責任が伴うということです((逆にいうと、責任を伴わせるのは酷な場合もあります。例えば、20歳以下の未成年者は、まだ社会経験が浅いということで、一律、親権者などの同意のない契約を取り消すことができます。))。

⑵ 契約書の意味

  このように、契約は口約束で成立するのが原則です((例外もあります。例えば、金銭消費貸借契約(お金の貸し借りなど)では、金銭などの目的物を渡すことと、それを返す旨の合意(約束)が必要です。民法587条(消費貸借)は「消費貸借は、当事者の一方が種類、品質及び数量の同じ物をもって返還することを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって、その効力を生ずる。」と規定しています。))。

  それでは、契約書は不要なのでしょうか。また、契約書を作成することに、どのような意味があるのでしょうか。

  結論からいうと、契約書を作成する主なメリットは、①紛争の予防になること、②紛争がおきてしまった場合の証拠になること、の2点です。

  契約で形に残さないと、お互いが良好な関係であればいいですが、険悪な関係になったとき、言った言わないの争いとなり、紛争が発生します。

  契約書は、契約自体の存在とその具体的な内容を証明する手段になります(上記メリット②)。また、契約書を作成する際には、どのような言葉を選ぶのか、互いに話し合いをしますので、互いの認識に齟齬がなくなり、紛争の予防にもなったります(上記メリット①)。
全ての契約について契約書を作成する必要はありませんが、取引規模が大きいなどの重要な契約を結ぶ際は、契約書を作成することをオススメします。

⑶ 契約成立の要件

  全て契約に共通するのは、「契約当事者の考え((法律の言葉では「意思」や「意思表示」といいます。))が合致していること」が必要であるということです。
この「考え」がどこまで合致していればいいのかという点は、契約の種類・類型によって異なります。言い換えると、その契約の本質的な部分は何なのか、ということに関係します。

  例えば、売買契約の本質は、「何を」「いくらで」売り買いするのか、ということが本質です((民法555条(売買)は、「売買は、当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することによって、その効力を生ずる。」と規定しています。))。すなわち、売買では、売買の対象である「物」が何であるのか特定されていて、その代金の「値段(あるいはその計算方法)」についての考えがお互いに合致し、約束することで売買契約が成立するのです。

  このように、原則として、考えが合致して口約束をすれば契約が成立しますが、口約束だけでは契約が成立せず、それ以外の事実も契約が成立するための要件となっている契約の種類もあります。

  例えば、(金銭)消費貸借契約では、実際に金銭などの物を相手に渡す必要があります((民法587条(消費貸借)は、「消費貸借は、当事者の一方が種類、品質及び数量の同じ物をもって返還することを約して相手方から金銭その他の物を受け取ることによって、その効力を生ずる。」と規定しています。))。また、保証契約は口約束では成立せず、書面(保証契約書)が必要です((民法446条(保証人の責任等)の2項は、「保証契約は、書面でなければ、その効力を生じない。」と規定しています。))。

 

2 不法行為

⑴ なぜ権利義務が発生するのか?(過失責任)

  権利義務は、契約以外の場合にも発生する場合があります。

  例えば、あなたが交通事故に遭い、車をぶつけられた場合、壊れた車の修理代等を弁償してほしいと思うのは当然の感覚だと思います。このとき、加害者とあなたは契約をしたわけではありませんが、相手の不注意で損害を負ったといえる場合には、その不注意によって生じた損害を賠償するよう請求することができます。

  ここでは、相手に不注意(過失)がある場合でないといけないという点がミソです。逆にいうと、責任を負わせるだけの落ち度がなければ、損害賠償責任を負わないということです。これを「過失責任主義」といいます。

  つまり、過失がある場合は相手の人にその損害を賠償すべきだが、過失のないときにまでお金を弁償するのは酷だ、という価値判断が法律になっているのです。

⑵ 不法行為に基づく損害賠償請求権の要件

  それでは条文を見てみましょう。

【民法709条(不法行為による損害賠償)】
「故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」

  要件を細かく分けると((ここではざっくりとしか分けません))、

①「故意又は過失」
②「他人の権利又は法律上保護される利益を侵害」
③「これによって」
④「生じた損害」

・・・という風になります。

 

  この①~④の要件を満たせば、相手方に対して、不法行為に基づく損害賠償請求権が発生しますので、損害賠償請求が可能になります。

  ①の「故意又は過失」は、先ほどお話しした過失責任主義を明らかにしています。

  ②は、他人の生命を奪ったり、身体に傷害(障がい)を負わせたり、財産の価値を無にさせたり、減少させた場合だと思っていただければ大丈夫です。

  ③は、非常に難しい問題です。

  例えば、自分が交通事故を起こして人を怪我させてしまい、救急車を呼んだとしましょう。幸い、軽傷だったようですが、救急車で被害者を搬送中、その救急車も交通事故に遭ってしまい、被害者が重傷を追ってしまった場合、どうなるでしょうか。そもそも自分が交通事故を起こさなければ、救急車を呼ぶ必要もなく、被害者は重傷を負わずに済んだので「これによって」に該当するとも言えなくもありません。

  もっとも、軽傷を負った点について責任を負うのはまだしも、重傷を負ってしまった部分については、2回目の救急車の事故の際の関係者がその責任を負うべきで、自分まで負うのはどうなのかと考えるのが通常だと思います。

  そこで、③の「これによって」とは、無限に責任を負うのではなく、常識に照らして相当な範囲((法律の言葉では、「相当因果関係」といいます。))を意味すると考えられています。

  もっとも、裁判でも、どこまでは「相当な範囲」なのかについて激しく争われ、人が亡くなってしまった事件の場合には、非常に重大な問題になります。

  ④の「生じた損害」も、そもそも損害が生じたのか、損害が生じたとしてその損害額(金額)はいくらなのか、といった点が裁判で激しく争われることも少なくありません。

⑶ 慰謝料とは何か?

  例えば、損害額の問題として、「慰謝料」がよく登場します。

  慰謝料とは、人が怪我をして痛い思いをしたなど、その精神的な苦痛をお金で賠償するものです。もともと、精神的な痛みという金銭的に評価することが不可能なものを金銭に評価するので、非常に困難な問題です。

  日本も裁判例などで、ある程度慰謝料の金額を予測することも可能ですが、同じ事件・事故は1つとしてなく、必ずしも予想に近い金額の慰謝料が発生するとも限りませんので、非常に難しい問題です。

  また、慰謝料の金額は、文化や考え方によっても大きく左右され得るものですので、諸外国と比較しても、大きく違ったりします。

 

第5 身分関係の変動と親族・相続

1 家族

⑴ 結婚と親子

  人は、運命の人(と思った人)と結婚し、子ども授かったりします。

  結婚も、お互いの考え(夫婦として実際に共同生活を営もうとする考え)が合致し、約束(婚約)の上、婚姻届を役所に提出することによって成立します。

  そういう意味では結婚も「契約」です。が、口約束だけでなく、役所に婚姻届を提出するこによってはじめて婚姻という法的効力が生じます((民法739条(婚姻の届出)の1項は、「婚姻は、戸籍法(中略)の定めるところにより届け出ることによって、その効力を生ずる。」と規定しています。))。

  子どもを授かって無事に生まれると、子が未成年になるまで、親は親権を有することになります((民法818条(親権者)の1項は、「成年に達しない子は、父母の親権に服する。」と規定しています。))。

  親権という言葉は日常でも時おり耳にすると思いますが、親権の具体的な内容は、主に、①監護・教育((民法820条(監護及び教育の権利義務)は、「親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。」と規定しています。))、②財産管理の2つです((民法824条(財産の管理及び代表)の本文は、「親権を行う者は、子の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為についてその子を代表する。」と規定しています。①は同居して子育・養育することです。②は、例えば、子どもがお年玉を貰った時に、「親が預かるね」などといった場合がこれに当たります。))。

⑵ 離婚

  運命の人だと思っても、離婚を選択する人もいるでしょう。

  離婚は、一度結婚して共同生活を営んでいた夫婦が、将来に向けて別々の人生を歩むための作業であり、かなり多くのことを決めなればなりません。

  そもそも離婚をするかどうかを含め、財産分与(夫婦で築いたそれぞれの財産が2分の1ずつになるように分配すること)、慰謝料の有無・金額、未成年の子どもがいる場合は親権者を誰にするか・養育費をどうするか・面会交流(親権者でなくなった方が子と会って交流すること)をどうするか、年金分割(扶養に入っていた場合に年金記録を分けること)をどうするかといったことを決める必要があります。項目も多岐にわたり、婚姻生活が長ければ長いほど、夫婦の歴史も長く、感情的な問題もあるので、エネルギーが必要になります。

 

2 相続

  最後に、人が亡くなると、相続の問題になります((民法882条(相続開始の原因)は、「相続は、死亡によって開始する。」と規定しています。))。

  相続は、亡くなった人((法律の言葉では、「被相続人」といいます。))のプラスもマイナス含めて全ての財産について、法律で定められた人((法律の言葉では、「法定相続人」といいます。))が、法律で定められた割合((法律の言葉では、「法定相続分」といいます。なお、遺言がある場合はそれに従うのが原則です。))で引き継ぐことをいいます。

  相続にあたっては、遺言の有無を確認した上で、相続人は誰か、遺産にはどのようなものがあるか、どのように分けるのか、といったことを決める必要があり、場合によっては相続人が多くいて、話し合いも収集がつかなくなってしまうことも少なくありません((他にも、❶相続人の1人が、被相続人の生前、同居などをしつつ介助・介護をしていた関係で、キャッシュカードや通帳も管理しており、いざ相続となった場合に、他の相続人から、あったはずの貯金が極端に減少しているとして、(その真相は別にして)勝手に使い込んだと文句を言われる場合、❷被相続人が再婚しており、前の配偶者との間に子がいて、今の配偶者や子がいるなど、相続人の間に直接の血縁関係や交流がなかった場合、などは感情的に対立する場合も少なくなく、紛争になる場合もあります。))。

 

3 その他

  民法では、権利義務の発生原因として、他にも「不当利得」や「事務管理」といったことも規定していますが、本稿では割愛します。

 

第6 最後に

1 以上みてきたように、民法は、人が生まれてから亡くなるまでの全てをカバーする法律であることが分かると思います。
人生は、権利義務が発生・変動・消滅することの連続です。生きている間に、紛争に巻き込まれない方がおかしいと言っても過言ではないかもしれません。

2 紛争に巻き込まれないにこしたことはないですが、もし紛争に巻き込まれ、話し合いでも解決できない場合、どのようにして紛争を解決するのでしょうか。

  ヒントは、実体法が権利義務のカタログであり、「法律要件→法律効果」が沢山書いてある点にあります。具体的には、法律に規定された各種紛争解決手段を使って解決するのですが、この「→」の部分にあたる法律があるのです。

  この「→」の部分を『手続法』というのですが、民事訴訟法が民事裁判手続の大原則を定めている一般法に当たります。そこで、次回は、民事訴訟法について書いていきたいと思います。

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