法科大学院生と民間企業への就活

1 はじめに

 今回の投稿の目的は、民間企業への就活を考えている法科大学院生(とりわけ学部上がりで職歴のない人)に向けて、私の思う就活の「方向性」をざっくりとですが書いてみることです。

 実をいうと、私は、法科大学院在学中に、就職活動をしていました。法科大学院も修士課程なので、在学中に新卒枠での就職活動が可能です。3月に法科大学院を修了しても、その後の5月に司法試験が実施されますので、私は、6月入社を希望して就職活動をしていました。
 就活をしていた主な理由は、①企業内弁護士に興味があったこと、②経済的に専業受験生として受験ができるのは、院終了後の1回目だけであり、2回目以降は働きながらの受験になること、③司法試験に合格した後、司法修習を経ずに弁護士登録できる例外ルートがあり(弁護士法5条参照)、この例外ルートへ進もうと考えていたことの3つでした。

 そうはいっても、いざ就活を始めようにも「自分はどうしたらいいのか分からない」という人が多いと思います。多くの人が、ジュリナビ等で求人を覗いたり、「法科大学院 就活」とググってみたりと、そんな感じだと思います。私もそんな1人でした。

 なお、これから書くことは私が実際に就活を体験し、考えたことを一般化したものです。あくまでも個人的見解にすぎませんが、ロー生の民間就活情報は非常に少ないことも事実なので、読んでいただいた人に少しでも参考になれば幸いです。

2 就活の正体

 結論、就活とは、「①自分自身でこれまでの人生経験を振り返えり、理解をしたうえで、②説明をし、③会社の採用担当者に自分の将来(その企業で活躍している姿)を想像してもらい、④採用することを決めてもらう作業」といっていいかと思います。
 ④が就活をする目的だとすれば、①から③は目的達成のための手段です。なお、①は自己分析に、②は自己ピールに、③は志望動機に、それぞれ関係します(後述)。

3 目的の具体化→考慮要素の洗い出し

 前述の通り、就活の目的は内定を出してもらうことですが(④)、どのようにすれば採用担当者は内定を出してくれるのでしょうか。
 あくまで一例ですが、私は次のように判断しました。「法科大学院生だって、職歴がない普通の新卒就活生と同じだよな…。それなら、採用担当者は、即戦力となる人材ではなく、『伸びしろがある人材』を採用したいと考えるはずだ。その『伸びしろ』とは、即戦力にはならないにせよ、一定期間の研修・職務経験を経ることでいずれは会社の利益に貢献できる見込みが大きいこと、を指すと言ってよいのではないか。そして、自分が将来的に会社で活躍(利益に貢献)しているところを具体的に想像させることができれば、採用担当者は、自分に伸びしろがあると判断してくれるのではないか。」
 こんな塩梅で、私は、採用担当者に「伸びしろ」があると認めてもらえれば内定を出してもらえると考えました。雑な例えですが、「伸びしろ」が法律要件だとすれば、「内定」が法律効果みたいなイメージです。「伸びしろ」の有無は評価を伴うので規範的要件のようなものといえます。

 そこで、「伸びしろ」があると採用担当者に判断してもらうための考慮要素(評価根拠事実)を自分なりに考える必要があります。私は、「伸びしろ」を構成する要素を、理解力・素直さ・想像力・忍耐力・計画性・行動力などに分解しました。
 このような観点からESや面接での質問をみると、採用担当者の質問の意図をある程度把握・予測できるようになります。

4 考慮要素を自己分析・自己PR・志望動機にあてはめる

 前述の通り、内定という目的達成のための手段は、①自己分析、②自己アピール、③志望動機です。①から③は、「伸びしろ」があると認めてもらうための判断材料を、採用担当者に提供する作業です。ESや面接の際は、上記の考慮要素に紐づけたうえで、個々の質問に回答することを心がけるべきです。
 ①の自己分析では、まず、自分の人生を振り返り、これまでの選択を理解します。次に、その合理的な理由を考え、説明する準備をしましょう。
 ②の自己アピールでは、①の分析を基に、これまでの選択や経験について、自分はどのように受け止めたのか、人生観・為人にどのような影響を与えたのかを、ES・面接で説明します。
 ③の志望動機では、①②を受けて、このような人間になりたい、このような社会人生活を送りたい、その想いが叶うのは御社(貴社)であることを面接(エントリーシート)で伝え、採用担当者に自分が会社で活躍している姿を想像させます。
 ここで非常に大切なのが、②では、過去の選択や経験に関する事実だけを伝えるだけでは足りず、必ず事実に評価を加えるということです。これは論文答案のあてはめと似ています。例えば、自己アピールで「学生時代に自分でサークルを立ち上げた。何故かというと所属したいサークルがなかったから自分で作りました。このように自分には積極性があります。」といったアピールで終わってしまう人が多いですが、「サークルを立ち上げるにしても、人を集めるなり、大学に公認してもらうなり各種の調整が必要でした。例えば、仕事で新しい事業を立ち上げる際にも、ビジョンの共有や関係部署との調整など、他人を巻き込んで仕事を進める必要があると思うので、私の訴求力や積極性は御社(貴社)でも活きると考えます。」といった具合に、もう一歩踏み込んで、評価をして伝えることが大切です。こうすることで、採用担当者は、自分の将来像し易くなるので、③に資します。

 また、①は自分の過去に、②は現在に、③は将来に、それぞれ関係してきます。この①から③の時間軸の合理性・一貫性も意識できると、「伸びしろ」に説得力が増します。なぜなら、採用担当者は、このまま入社をすればその後も同様の力を発揮してくれるだろうと想像し易くなるからです。

 残るは④です。ここは採用担当者が採用するかどうかを決める段階なので、あとは相性の問題です。就活は恋愛に例えられるのはここに由来するのだと思います。もっとも、説明会やOB訪問、HPを調べるなどして、相性をできる限り摺り合わせることは可能ですので、これらを怠るべきではありません。

 あとは、試行錯誤しながら、実際に就活を進めるだけです。就活は辛いことも多いですが、早いか遅いかの差はあれど、いずれ内定が出ると思います。

5 まとめ

▷ 就活とは、「①自分自身でこれまでの人生経験を振り返えり、理解をし、②説明をし、③会社の採用担当者に、自分の将来を想像させ、④採用することを決めてもらう作業」である。
▷ 内定の条件は、「伸びしろ」があると認めてもらうことである。「伸びしろ」を構成する要素は、理解力・素直さ・想像力・忍耐力・計画性・行動力などに分解できる。
▷ ②の自己アピールでは、事実をしっかり評価して「伸びしろ」があることを伝えるべきである。
▷ ①自己分析→②自己アピール→③志望動機という「過去→現在→将来」のベクトルの合理性・一貫性も大切である。
▷ エントリーシートや面接では、「伸びしろ」やその構成要素を意識し、その質問が出された意図を考えながら回答するべきである。

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