【再現答案】平成26年度司法試験公法系第2問(行政法)

【行政法】5頁目末行まで

[設問1]
第1 本件要綱の法的性質とその効果について
 ⒈ 本件申請は、採石法(以下、「法」という)33条に基づく申請である(法33条の4には「申請」とある)。本件申請は「法令」に根拠がある(行政手続法(以下、「行手法」という)2条3号)。また、法33条が財産権(憲法29条)という重要な権利についての処分であることから、行政庁には「応答」義務があるといえ、本件申請は行手法2条3号の「申請」にあたる。法令に根拠があるから行手法3条3項の適用除外もない。
   故に、本件採石認可拒否処分は申請に対する処分である。
 ⒉ そして、法33条の2第5号は採石法施行規則(以下、「規則」という)8条の14に、法33条の3第2項は規則8条の15に、それぞれ委任をしているが、これら規則は、本件要綱に対して何ら委任をしていない。
故に、本件要綱は審査基準(行手法5条1項)である。これは法規命令ではなく、行政規則としての法的性質を有する。
 ⒊ 行政規則は、法規命令のような外部効果として国民の権利義務に直接の影響力はなく、直接には行政庁の処分判断の基準となる法的効果を有するにすぎない。

第2 本件要綱自体の有効性について
 ⒈ 審査基準が外部効果を有しないとしても、それ自体が法の趣旨・目的に反して無効であれば、審査基準に基づいてされた処分は違法となる。
 ⒉ そこで、Aからは、法による認可制は、財産権という人権の制約になることを考慮して、法33条の7第2項が「必要な最小限度」「不当な義務を課……ならない」としていることから、法は、法とその委任を受けた規則以外の制約を加重することを許さない趣旨であり、本件要綱が保証人を要求することは加重であり、法の趣旨・目的に反する。これに基づいてされた採石認可拒否処分も違法である。との反論があると考えられる。
 ⒊ これに対しては、以下のように考える。すなわち、法33条の2第4号は、採石計画に採石による「災害の防止」に関する事項を定めることを求め、また、法33条の4は採石が「他人に危害」及ぼす等の場合には認可をしてはならないとしている。この趣旨は、採石は災害を引き起こすおそれがあるので、これを防止して周辺住民の生命身体や他の産業を保護することにあると考えられる(1条参照)。そして、法33条の7第2項はA主張のように必要最小限性などを求めるものであるが、「条件」(同条1項)についてのものであり、本件要綱が保証人を求める趣旨も、跡地防災措置を確実にさせて災害から周辺住民等を守ることにあるから、法の趣旨に沿う。本件要綱は「条件」のための審査基準としての意味があるのである。
 ⒋ 故に、本件要綱自体は有効である。

第3 個別的配慮義務について
 ⒈ もっとも、審査基準自体は法の趣旨に反しなくとも、行政庁・行政主体は、これを個々の事案に機械的に適用すれば足りるのではなく、個々の事案に応じた考慮をする義務がある。
 ⒉ そこで、Aからは以下のような反論があり得る。第一に、本件要綱が保証人を求めるのは、防災措置を確実にさせるためであるが、AはB県では突出して資本金や事業規模が大きく、保証人をたてなくても確実に防災ができるから、これを無視する点で違法である。
第二に、他の地方公共団体にあっては、保証を求めるかはまちまちであり、保証を求めていないところもあるが、このような平等原則を考慮しない意味で、違法である。
 ⒊ これに対しては、以下のように考えるべきである。法33条の4は、不許可事由として「公共の福祉に反する」といった抽象的文言を使っており、これはこれに詳しい知事の専門的な裁量を認める趣旨である。そして、Aは規模は大きいが、大企業とまではいえず、自分だけで防災ができるとは限らないから、BがC組合の保証を求めることについては合理的理由がある。

第4 結論
 以上より、採石認可拒否処分は適法である。

[設問2]
⒈ Bが行う処分の候補としては、①認可等の取消し等(法33条の12各号)、②法33条の13各項の処分、がある。
⒉⑴ まず、②のうち、1項は、Aの財務状況ほ良好で保証がなくても防災が期待できるといえ、「緊急の必要」があるとはいえないから、とることができない。
 ⑵ また、①は、本件でAは認可当初は保証人をたていたが、後に保証契約を解除したのであって、撤回にあたる。撤回は、行政行為の合目的的回復だから、法33条の12により法律の根拠があるといえるが、授益的処分の撤回であるから、相手方の不利益と公益の比較考量により、後者が大きいといえなければならない。
   しかし、本件では、Aには財産的基盤があるのであって、災害防止が期待できないとはいえないから、後者が大きいとはいえない。
   故に、①もできない。
⒊ そこで、Bは、②のうち、2項の処分でいくべきである。採石計画と保証書が一体であると考えれば、できる。

[設問3]
⒈ Dは、非申請型義務付け訴訟(行訴法3条6項1号)を提起すべきである。では、訴訟要件をみたすか。
 ⑴ まず、Dは法33条の13第2項という「一定の処分」(37条の2第1項)を求めるものである。
 ⑵ また、「法律上の利益を有する者」(37条の2第3項)とは、処分がされないことにより、法律上保護された利益を侵害され、または必然的に侵害されるおそれある者、をいう。これは根拠法令が原告の利益を個々人の個別的利益として保護しているときに認められる。これは37条の2第4項が準用する9条2項の要素を考慮して判断する。
   本件で、Dは本件採石場の下方10mに、住居はしていないものの、森林を所有している。そして、法33条の4は「林業」に損害を与える場合を不認可の考慮要素としているから、これを個々人の個別的利益として保護している。
   故に、Dに原告適格はある。
 ⑶ 「重大な損害」のおそれが求められる趣旨は、非申請権者に実質的に申請権を認めることとなるから、それ相応の救済の必要を求めることにある。本件では、Aは財産的基盤があり災害防止が期待できないとはいえないし、Dの林業の損害は金銭賠償で回復できる(37条の2第2項)。故に、損害要件を欠く。
⒉ Dの訴えは、訴訟要件を欠き、不適法である。

以上

★感想:
 ▷形式面について。実質途中答案です。
 ▷内容面について。設問1については、試験後、もっと拾うべき事実が問題文・誘導文にあることに気づき、たいへん後悔しました。用語も微妙に違っています。たとえば、審査基準自体の有効性ではなくて、合理性ですし。また、個別的配慮義務ではなく、個別的審査義務でしたね。
 設問3については、処分の根拠条文の指摘がないため、その条文が何を個々人の個別的利益として保護しているのかという視点が欠けていました。また、重大な損害についても、Aが資金があって未だ防災措置がされないおそれがあるとはいえないという蓋然性・緊急性の点は、仮の救済で考慮すべき事情であって、義務付け訴訟の損害要件で考慮すべき事情ではなかったなぁと。色々と基本的知識の欠如を露呈する形の答案となってしまいました。

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