【再現答案】平成26年度司法試験公法系第1問(憲法)

(司法試験再現答案の掲載について)
 私が受験・合格した平成26年度司法試験論文式試験の再現答案を掲載致します。
ご覧になる際は、下記の点についてご留意ください。

 ①再現答案の作成は本試験最終日の翌日からすぐにとりかかりましたが、長丁場の試験だけあって、答案構成を見ても正確に記憶を喚起できませんでした。そのため、再現率はあまり高くないかと思います。
 ②再現の下に付した「★感想」は、試験終了直後と再現答案作成時のものであって、各記事をアップした時点のものではありません。
 ③あくまで再現答案ですので、内容の正確性を保証するものではございません。各人のご判断の下に参考にしてください。

 上記は後日アップする各科目の再現にも妥当するものなので、これらを前提に、読んでいただければ幸いです。
 本日は、公法系第1問(憲法)をアップします。

【憲法】6頁目末行まで
[設問1]
⒈ 私は、C社の訴訟代理人として、本条例2条・4条各号自体が、憲法(以下、略)22条1項に反するため違憲無効(98条1項)であり、C社は許可なく自然保護地域でタクシー事業ができると主張する。以下、詳述する。
⒉⑴ 22条1項は「職業選択の自由」を保障している。「職業」とは、自己の生計維持のためにする経済活動をいう。そして、職業を「選択」する自由だけを認めてもそれを遂行できなければ無意味であるから、「職業」には、その遂行の自由、すなわち、営業の自由が含まれる。
   本件で、C社は、タクシー会社である。C社のタクシー事業は、C社やその社員の生計を維持するための経済活動だから「職業」である。故に、C社のタクシー営業を行う自由は、営業の自由として、22条1項により保障されいている。
 ⑵ そして、一般的に、職業は、人の生活の基盤となる糧を得るための活動である。また、職業は、個人がその個性を全うすべき場でもあり、人格的な利益と密接に関連する。このように、営業の自由を含め、職業選択の自由は、重要な権利である。
 ⑶ 加えて、タクシー事業にあっては、人の移動を円滑にさせるから、他人の「移転の自由」(22条1項)にも資する。のみならず、C社のような自然保護地域におけるタクシー営業は、国民が日常とは異なる自然環境に触れることによりその知見・人格を豊かにするという意味で「知る自由」(21条1項参照)にも資する。さらに、低運賃でタクシーを利用できれば、観光振興にも寄与することができる。このように、タクシー事業の営業の自由は、非常に重要な権利であるといえる。
⒊⑴ そして、C社は、A県内でのタクシー事業の許可は得たが、A県B市の自然保護地域でのタクシー事業は不許可となった。この制約は、本条例2条・4条各号によるものである。
 ⑵ そして、この制約は、C社がA県までタクシー営業の進出をしよした主たる目的が、B市の自然保護地域での営業に大きな利益を見込んだ点にあることからすると、営業進出自体の意義を失わせるに等しい。これは強度の制約であるといえる。
⒋ そこで、このような非常に重要な人権に対する強度の制約である本条例2条・4条各号は、①規制目的が重要であり、②その目的達成手段が実質的に関連性を有するといえない限り、違憲無効となる。
⒌⑴ア 本件をみるに、たしかに、①本条例2条・4条各号が許可制とその条件を定める目的は、これにより「輸送の安全を確保」、自然保護地域の「自然を保護」、観光客の「より一層の安全・安心」にあるとされており(本条例1条)、この目的は重要であるといえる。
  イ しかし、本条例には真の目的が隠れている。それは、B市の既存タクシー業者の営業利益を保護することである。すなわち、本条例の制定経緯をみると、B市タクシー事業団体が過酷な競争を強いられると訴えていたこと、B市の既存タクシー業者は既にD社から電気自動車を購入済みであること、これに対応する形で、本条例4条1号柱書は「電気自動車」を許可条件としている。この条件は、既存業者の利益保護という目的に適合的であり、本条例の真の目的は、既存業者の利益保護にあるといえる。そして、このような目的は、本来、各事業者の営業努力に委ねるべきものであるから、重要とはいえない。
 ⑵ア 仮に、これらの目的が重要だとしても、②隠れた目的達成手段については、本条例4条3号は、同条2号の営業所の年数要件でもって十分達成でき、過剰規制であるから、必要性を欠く。
  イ また、本条例1条明記の目的達成手段については、ⅰ「より一層の安心・安全」については、タクシーの運転免許は、普通の運転免許の比べてその取得要件が加重されており、タクシー運転手は十分な技能があるから、本来規制は不要である。本条例4条3号ロ・ハは、右LRAがある過剰規制であり、必要性を欠く。また、ⅱ「輸送の安全の確保」は、本条例4号イロハではなく、保護区域の狭い道路を拡張すれば達成でき、LRAがあるから必要性を欠く。ⅲさらに、本条例の許可条件は、近年の規制緩和の流れに逆行するものであり、ドラスティックにすぎ、過剰である(附則2条参照)。やはり必要性を欠く。
⒍ したがって、本条例2条・4条は、実質的関連性の基準をみたさないから、違憲無効である。C社にはA県での営業許可がある以上、同県B市の自然保護区域内においても、許可なくタクシー営業ができる。

[設問2]
⒈⑴ 被告側の反論としては、まず、職業選択の自由は他人との接触が避けられず他者加害の契機が大きいから制約が内在していること、また、本条例は自然保護地域内という営業の一態様に向けた規制であり強度とはいえないことから、原告主張のような厳しい審査基準は妥当しない、というものが想定される。
 ⑵ア 私見としては、前者の反論については、職業選択の自由には社会的相互関連性があること、だからこそ22条1項は13条とは別に「公共の福祉に反しない限り」と明記していると考えるから、これは正当であると考える。
  イ しかし、後者の反論については、反対である。なぜなら、営業の一態様に対する制約であっても、それがその職業について重要な位置をしめるなら強度の制約といえる。そしてC社は、自然保護地域における営業に収益力を見いだしたからこそ、A県まで新規参入しているのであり、この目的を奪うことは、新規参入そのものの規制に等しく、強度の制約であるといえるからである。
  ウ そこで、職業選択の自由には、制約が内在する面はあるものの、原告の主張するように、その人権は重要であり、また上述のように規制も強度であることから、原告主張の通り、実質的関連性の基準を採用すべきと考える。そして、一般に、許可制は、強度の制約であるから、右関連性の審査は、個々の許可条件にまで及ぶと考える。
⒉⑴ 次に、被告側の反論としては、本条例の目的は、1条に明記されたものだけであるとの反論が想定される。
 ⑵ア 私見は、これに反対である。なぜなら、条例制定の経緯や、その規定の建て付けからして、別の目的が隠されているといえる場合がありうるからである。
    たしかに、電気自動車を使えば排気ガスからの「自然の保護」にも資するし、営業所・運転者要件は、「安全の確保」にも資する。
    しかし、他方で、原告主張の本条例制定経緯・4条1号の電気自動車に加えて、もともとB市の既存タクシー業者にとって自然保護地域での営業が大きな収益源となっていたし、また、4条2号の営業所の年数要件も既存業者の利益保護とも適合する。さらに、4条3号イロハのこの隠れた目的に適合する。そして、本条例の許可は、施行前でもすることができ、既存業者はこれにより保護されるのである(附則1条2項)。
    故に、本条例には既存業者の利益保護という目的もあるといえる(隠れた目的のあぶり出し。特に本条例1条のような消極目的的規制は隠れみのにされ易い)。
  イ もっとも、既存業者の利益は、本来、各事業者の自助努力に委ねるべきものではあるが、地方公共団体が、地元の業者を守ることも政策・使命としてありうるところであるから、隠れた目的も、一応重要であるといえる。
    そこで、本条例は、1条所定の目的だけでなく、この隠れた目的についても実質的関連性が必要である。
⒊⑴ そこで、被告側の反論としては、いずれの目的との間にも各許可条件に実質的関連性があるとの反論が想定される。
 ⑵ 私見はこれに反対である。
  ア まず、既存業者の利益保護目的についてみる。たしかに、本条例4条1号は、B市の既存業者の多くが既に電気自動車を買っていたことから、実質的関連性がある。しかし、4条2号・3号ロハについては、所定年数の営業所・運転者条件を満たさない既存業者も多くいると思われ、実質的に関連性があるとまではいえない。
  イ また、1条明記の目的ついては、たしかに、原告の主張するⅰ事故が多い原因は、運転技能ではなくその道に慣れていないことによるものであるから、4条3号イロハの条件は実質的関連がある。また、ⅱ道路の拡張は、その工事により自然環境が壊れるおそれがや、財源にも限りがあるからLRAとはいえない。しかし、ⅲ4条3号ロハは、イのB市実施の試験をすれば1条の目的は達成できるから、過剰である。必要性を欠く。
⒋ 以上より、本条例は実質的関連性を欠き(②)、違憲無効である。C社の請求は認められる。

以上

★感想:
 ▷形式面について。問題文にC社は条例「自体」が違憲云々あったので、思い切って法令違憲のみで突っ込みました(本番では書き出す前に15回位「これでいいんだよな?」と確認しました)。答案構成段階で、これは違憲やろと思ってしまったので、原告・被告・私見という三者の視点ではなく、原告・私見vs被告という袋だたき答案になってしまったのがもったいないと思いました。
 ▷内容面について。薬事法違憲判決の薬の字も書きませんでした(書くの忘れていました)。意識して書いてはいるので伝わって欲しいです。採点実感等では、判例の引用も要求されているし、多くの受験生は薬事法違憲判決くらいなら引用してくると思うので、非常にまずい印象です。

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